ERPとAIの組み合わせが企業にもたらすメリットや課題とは?

ERPとAIの組み合わせが企業にもたらすメリットや課題とは?

AI技術の進展に伴い、企業の業務効率化や意思決定支援におけるERP(基幹システム)との組み合わせが注目されています。特に機械学習とディープラーニングの分野で大きな進歩を遂げたAIは、ERPと組み合わせることでデータ分析の精度向上や単純作業の自動化、不正行為の検知などが可能です。

この記事では、ERPとAIを組み合わせることによるメリットや課題について詳しく解説します。AIが組み込まれたERPについて興味がある方、業務効率化を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

1.現在注目されているAI技術とは

ビジネス分野で大きな注目を集めているAI(人工知能)は、特定の技術を指す言葉ではありません。AI技術は、コンピュータで人間の知覚や認識、推論などの知的行動を再現することを目指すさまざまな技術の総称です。特に重要なのが「機械学習」と「ディープラーニング」の2つの技術です。

機械学習は、コンピュータがデータを基に学習し予測や分類を行う技術です。過去のデータからパターンやルールを見つけ、新たなデータに対して予測を行います。ERPシステムでは、機械学習が自動入力やデータ分析の精度を高め、業務効率を向上させます。

ディープラーニングは、ニューラルネットワークという人間の脳神経回路を模倣したモデルを用いる、機械学習の一種です。多層のネットワーク構造で大量のデータを処理し、高度な特徴抽出を行います。これにより、従来の機械学習と比べて精度の高い予測や分類が可能です。

AI技術は、ビジネスのさまざまな分野ですでに利用されている技術です。今後もERPシステムとの組み合わせで、データ分析の精度向上や単純作業の自動化、不正行為の検知など、さまざまな業務システムの効率化が期待されます。

2.ERPとAIを組み合わせるメリット

近年、大手ERPベンダーはERP(基幹システム)にAI関連機能を組み合わせた製品を次々と開発しています。たとえば、MicrosoftのDynamics 365(d365)には、AIアシスタントのCopilotが組み込まれており、過去のMicrosoft製品で行っていた業務の自動化や効率化が可能になっています。

ERPとAI機能を組み合わせるメリットは、以下の通りです。

2-1.市場の高度な予測が可能になる

ERPとAIの組み合わせにより、市場予測の高度化が可能です。ERPシステムには企業経営に必要な膨大なデータが蓄積されているものの、効率的・効果的なデータ活用は簡単ではありません。AIに過去のデータを学習させることで、市場や需要の動向を分析でき、高度な予測が可能になります。

たとえば、販売実績や購入状況、気温や季節などのデータを基に製品需要の変化を予測させ、販売戦略や在庫管理を最適化させるといった活用方法が考えられます。AIの需要予測機能は、リアルタイムで最新のデータを反映させて分析するため、常に最新の予測を活用できるのもメリットです。

また、AIは異常値の発見や解決策の提案も行えます。工場IoTをはじめとしたIoTソリューションと連携すれば部品の交換時期や故障部分の予測、対応策の提案もしてくれるため、業務効率化を実現できる可能性が高まるでしょう。

2-2.意思決定の基盤となる情報を得られる

ERPへのAI搭載により、経営に必要な複雑なデータの相関関係を見つけ、情報を整理するのが容易となります。多様な要素が複雑に絡み合う現代のビジネス環境では、迅速な意思決定が難しい場合が少なくありません。

AIの数値解析能力により、人間では処理しきれない膨大なデータから適切な選択肢を導き出せれば、企業の競争力が向上します。たとえば、AIに業績に影響を与える要因や資金繰りのボトルネックを特定させ、解決策を挙げさせるといった活用も可能です。

ERPとAIの組み合わせは、経営者がより効率的に、かつ正確に経営判断を行うための強力な基盤となります。

2-3.単純作業を効率化できる

ERPにAIを組み込み、データの集計や表の作成などの単純な業務処理を自動化すれば、事務作業の大幅な効率化が可能です。たとえばAIは、渡したデータを入力・集計し、必要な情報を抽出して表やレポートを自動で作れます。人間では膨大な時間と労力がかかる作業も、AIはERPに蓄積された膨大なデータを高速で処理し、必要な情報を瞬時に判別して処理できます。

人間による入力が必要な際も、AIが候補を提案したり問題点を指摘したりできるため、ヒューマンエラーを防止しつつ、精度の高いデータ管理がより短時間で可能です。単純作業をAIに任せられると、人間は創造的で戦略的な業務に集中できるようになるため、全体の業務効率も向上します。

2-4.不正行為を検知できる

ERPとAIを組み合わせれば、従来の人間の目によるチェックでは見逃されがちな不正行為を検知できる可能性が大きく向上します。AI技術は膨大なデータの分析と異常値の検出が得意なため、不正な取引や不適切な会計処理を早期に発見可能です。

たとえば、AIが学習した過去のデータから不正の兆候をスコアリングしておけば、リスクの高い取引が発生した瞬間に特定できます。リスクが高いとAIが判断した取引にはストップをかけ、監査を担当する部署に連絡が行くように同時にプログラムしておけば、未然に不正を防げます。AIを組み込んだERPは、自社のガバナンス強化にもつながるでしょう。

3.AIを活用する前に想定しておくべき課題

ERPとAIシステムの組み合わせにより、企業が得られるメリットは数多くあります。同時に、AI導入に当たっては、いくつかの課題が存在する事実は否めません。ERPとAIを組み合わせるメリットを享受するには、以下3つの課題に対する解決策を準備しておきましょう。

3-1.大量のデータが必要になる

大量のデータとその適切な管理は、AI活用の大きな課題となります。AIのアルゴリズムは学習したデータに基づいて予測や判断を行うため、正確な答えを出すには大量の正確なデータが必要です。データの量や内容が不十分だったり不正確だったりすると、AIの性能は低下します。そのため、AIを活用するには学習用の膨大なデータを整備し、前処理しなければなりません。

また、学習したデータが不適切であったり、バイアスがかかったりしていた場合、出力される内容にも反映される点に注意が必要です。特に海外との取引にAIを活用する場合、見えないバイアスが原因で差別などの倫理的問題が起きないよう、入力する情報の精査や出力結果の調整も含めた対応を求められます。

3-2.AIを活用できる人材が足りない

AIの活用に関する大きな課題の1つは、AIを効果的に利用できる人材が不足していることです。AI活用に必要なのは、機械学習やデータ解析に関する専門的な知識と適切に扱うスキルを持つ、データサイエンティストやAIエンジニアなどのいわゆる「AI人材」です。しかし、この分野は急速に発展しており、需要に対して供給が追いついていません。

人材不足は、企業がAIを活用してビジネスを変革しようとする際に大きな障害となります。また、AIの専門知識を持つ人材の育成には時間と労力が必要であり、短期間で解決できる問題ではないのもネックです。AIの導入・活用を検討するのであれば、同時にAI人材の育成にも積極的な取り組みが必要となります。

出典:経済産業省「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方(令和5年8月)<概要>」

3-3.AIの解答を確認する作業が求められる

AIを活用する際の課題の1つに、AIが事実とは異なる情報を生成する「ハルシネーション」があります。ハルシネーションはAIが学習データを誤って解釈したり、不完全なデータを基に推測を行ったりすることで起こるため、AIが出した解答をそのまま使用するのは非常に危険です。

ハルシネーションの発生を抑えるには、学習データの質を管理し、常に最新かつ正確な情報を提供し続けなければなりません。また、AIの解答に対して人間がファクトチェックを行い、誤りを修正するステップが重要です。企業がAIを効果的に活用するには、業務プロセスに確認作業を組み込む必要があります。

まとめ

ERPとAIは、組み合わせることで膨大なデータを高速で処理し、市場予測や需要変動の予測、業務効率化、不正行為の早期発見など、多岐にわたるメリットを提供します。今後他社との競争で有利を得るためには、ERPに組み込まれたAIを活用できるか否かが重要になると言えるでしょう。しかし、AIの活用には大量のデータとその適切な管理、AIを扱える専門人材の確保、AIの解答を確認するためのチェック体制などの課題が伴います。

ERPとAIを組み合わせた製品の代表例が、Microsoft Dynamics 365です。既存のOffice製品と連携できるため、ExcelやWord、PowerPointのデータを活用しながら、AIによる業務の自動化を可能としています。Microsoft Dynamics 365について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。

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