グローバル化や業務の多様化に伴い、企業のIT基盤には柔軟性と迅速な対応が求められています。特に、異なる拠点での業務プロセスや法規制に対応しつつ、全社的なデータ統合を実現することは簡単ではありません。このような背景から注目されているのが、本社と各拠点で異なるERPシステムを運用しながら、全体の連携を保つ仕組みを提供する2層ERPです。
この記事では、2層ERPの基本的な概念や、注目される背景、メリットやデメリット、そして導入に適した企業について詳しく解説します。
1.2層ERPとは
2層ERPとは、企業が本社と支社・海外拠点などで異なるERPシステムを使用しながらも、全体の連携を保つ仕組みです。本社ではSAPのような大規模なERPシステム「コアERP」を運用し、支社や海外拠点ではそれぞれの事業内容や規模に合わせたERPソリューションを導入します。これにより、各拠点は現地のニーズに対応しやすくなる一方で、親会社とのデータ連携もスムーズに行えます。
2層ERPはクラウド型の導入が多く、導入コストやリスクを抑えながら迅速に展開できる点が特徴です。また、親会社のERPと子会社のERPが別々でも、データ連携機能があれば一元管理できます。このように、全体最適と個別最適を両立させることで、企業全体の効率向上が期待できるでしょう。
2.2層ERPが注目される背景
2層ERPが注目され、導入が進んでいる背景には、企業のグローバル化に伴う既存ERPの課題とクラウドERPの発展があります。市場のグローバル化が進む中で、従来のERPでは対応が難しい問題が発生し、それを解決する手段として2層ERPが台頭してきました。
2-1.企業のグローバル化により既存のERPに課題ができた
複数拠点を持つ企業がすべての拠点で同じERPを導入すると、地域ごとの商習慣や法律の違いから、業務効率や生産性が低下する可能性があります。特に問題が起こりやすいのは、海外にも拠点を持つ企業です。日本企業が本社で使用するERPは日本国内の商習慣や法律に適しているものの、海外で求められる要件を満たせず、業務に支障をきたす場合もあります。
また、大規模なERPは導入やカスタマイズにかかるコストが高くなり、すべての拠点に同一システムを展開するのが難しいという企業も多いようです。このため、拠点ごとに最適なサブERPを導入しつつ全体で連携できる、2層ERPが解決策として注目されています。
2-2.クラウドERPが発展した
クラウドERPの発展により、2層ERPの実現が容易になりました。従来のオンプレミスERPモデルでは、自社でサーバーやネットワーク機器を用意する必要があり、導入コストや管理負担の大きさが課題となっていました。しかし、クラウドERPであれば、インターネット経由で手軽に導入でき、設備や運用の負担も軽減されます。
クラウドERPは初期費用を抑えつつ、必要に応じてリソースを変更できるため、大企業だけでなく中小企業へのERP導入にも適したシステムです。クラウドサービスの手軽さから、潤沢な資金がなくとも支社や子会社に最適なERPの導入が容易となり、結果として2層ERPの運用が現実的なものとなりました。
3.2層ERPを導入するメリット
2層ERPを導入する主なメリットには、使用するERPシステムが異なっていても情報を一元管理できる点や、拠点ごとにシステムを最適化できる点が挙げられます。また、大規模ERPを複数使用するよりもコストが低く、M&Aへの対応力の高さもメリットです。以下では、2層ERPを導入する4つのメリットを解説します。
3-1.異なるERPを使っていても情報を一元管理できる
2層ERPの大きなメリットの1つは、異なるERPシステムを使用していても情報を一元管理できる点です。本社と支社、海外拠点でそれぞれ最適なERPを導入しつつ、連携機能を活用することで、企業グループ全体の経営データを迅速に収集・統合できます。
リアルタイムで各拠点の状況を把握し、適切な意思決定や経営判断を行えれば、迅速な対応が求められるビジネス環境での競争力を維持できるでしょう。また、リスクの早期発見・対策にもつながります。
3-2.拠点ごとに最適化したERPを使える
2層ERPを導入することで、各拠点の商習慣や業務フローに最適化したERPを利用できる点も重要です。たとえば、日本本社と海外の支社では会計基準や税制が異なるケースが多く、単一のERPシステムでは対応しづらい場面が珍しくありません。
2層ERPなら、現地の業務ニーズに合ったERPを各拠点で導入しつつ、本社のERPと連携できます。また、複数企業と合同で事業を行う中小企業でも、全社的にERPを変更せず、最適なERPを各部門に導入できるのもメリットとして挙げられるでしょう。
3-3.大規模ERPを複数使うよりもコストが低い
2層ERPの導入はコスト面でも優れています。大規模ERPをすべての拠点に導入する場合、初期費用や運用コストが非常に高額になるケースが少なくありません。
対して、2層ERPでは拠点ごとに小規模なクラウド型ERPを導入すればよく、コストを大幅に削減できます。クラウドERPはサブスクリプション型の料金体系が一般的です。初期投資を抑えつつ、必要に応じてリソースを追加・変更できるため、コストの管理がしやすくなります。
3-4.M&Aにも対応しやすい
2層ERPのメリットの1つは、M&Aにも対応しやすい柔軟性の高さです。合併や買収の際、合併先の事業プロセスを既存のERPに組み込むのは大変な手間がかかります。しかし、2層ERPでは異なるシステム同士でも連携できるため、既存のシステムをそのまま活用しつつ、新しいERPシステムに管理データを統合できます。
これにより、システム統合にかかるコストや期間を大幅に削減でき、業務の混乱やリスクを最小限に抑えられるでしょう。また、異なる言語や通貨にも対応できるため、グローバルなM&Aでもスムーズな経営統合を実現できます。
4.2層ERPを導入するデメリット
2層ERP導入には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。代表的なデメリットは、以下の2点です。
・各ERPにコストがかかる
2層ERPでは、本社と各拠点で異なるERPシステムを導入するため、拠点ごとにライセンス費用や運用費用が発生します。クラウドERPの活用により初期費用は抑えられるものの、複数のシステムを長期的に維持する場合、ランニングコストがかさみがちなのはデメリットと言えるでしょう。
・運用が複雑になりやすい
異なるERPシステムを運用することで、管理が複雑化しやすくなります。拠点ごとに異なるシステムの操作方法を習得する必要があり、トラブル対応やシステム更新も別々に行わなければなりません。運用フローを統一できなければ、経営管理業務の負担が増加します。
5.2層ERPの導入がおすすめの企業
2層ERPは、特に以下のような企業向けのシステムです。
・グローバル展開をしている企業
海外展開をしているグローバル企業では、拠点ごとに異なる商習慣や法制度に対応しなければなりません。2層ERPであれば、各拠点で最適なERPを使用しつつ本社とのデータ連携を維持できるため、全社的なデータ統合と現地対応の両立が容易になります。
・国内で複数拠点を持つ企業
国内に複数の拠点を持つ企業も、2層ERPの恩恵を受けやすい企業です。国内であっても、地域によって業務プロセスや慣習が異なるケースは少なくありません。2層ERPなら、各拠点の状況へ柔軟に対応しながら、本社で全体を管理できます。
・業務内容が幅広い企業
多様な業務を行う中小企業にも2層ERPは有用です。たとえば、製造・販売・サービスなどで業務プロセスが異なっていても、それぞれに最適なERPを導入できます。また、新規業務を始める際にも、ERPの追加や調整が容易です。
2層ERPは複雑なビジネス環境に柔軟に対応できるため、多くの企業にとって有益な選択肢と言えるでしょう。
まとめ
2層ERPは、企業のグローバル展開や多拠点展開に対応するための柔軟なITソリューションとして注目されています。特に、異なるERPシステムを使用しながらも、全社的なデータ統合と効率的な業務運営を実現できる点が大きな利点です。
クラウドERPの発展により、導入コストの削減や迅速な展開が可能となったことから、2層ERPは大企業だけでなく中小企業でも利用が進んでいます。しかし、複数のERPシステムを運用するためコストがかさみやすく、運用管理が複雑化するデメリットもあります。
2層ERPの代表例が、クラウド型ERPであるMicrosoft Dynamics 365です。拠点ごとの個別要件を細かく満たしながら全社的な連携ができ、海外拠点の場合でも、各国の言語や商習慣に対応したローカリゼーションが可能となります。Microsoft Dynamics 365について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。



